今回は、営業活動の改善にはどのような視点が必要になるのか。この点を確認していきます。

先日、静岡県で主に輸入玩具の卸販売を手掛ける中堅専門商社J社のコンサルティングをさせて頂きました。同社の業績は悪化を辿り、3期連続の売上高減少が経営課題となっています。小口取引が多く、昨今の運送コスト上昇によって、限界利益が確保できなくなっていました。ここ数年は営業拠点のリストラなど事業の効率化を進めたことで、営業面ではなんとか収支トントンの状態です。但し、ベテラン従業員の退職金負担もあり、2期連続の赤字決算となっています。J社は、これ以上の売上減少に歯止めをかけなくてはなりません。

J社は従来、営業担当者が強力な顧客関係性を有していて、同社とオンリーワン取引をしてくれる顧客も多かったのです。しかし、今は状況が一変しています。

既存顧客の売上が減少

J社は、5年程前から既存顧客の売上減少が顕著になっていました。要因は様々あるものの、J社社長が考えていたのは、営業担当者の世代交代にありました。定年退職となった従業員の多くは、長く経験を積んだ管理職の営業担当者でした。彼らは10年前には役職定年となって、後進の管理や指導から引退。担当顧客も若手に引き渡しました。

売上減少に危機感を感じたJ社社長は、自ら新規開拓営業の旗印を掲げて取り組みました。ところが、流通構造はとうの昔に多様化が進んでいます。事業者専用の卸・仕入れサイトなど、競合は無尽蔵に存在しており、新規開拓は成果があがりません。さらに、新規取引ができても、それが新たな運送コスト負担を生み出し、採算に乏しい取引先が増加する結果となりました。

 結局、既存顧客の売上対策まで後手にまわり、売上減少に歯止めがかからない状況に陥ります。既存顧客が競合他社との取引を開始した、という声がJ社社長の耳に頻繁に届くようになってきました。既存顧客への営業活動に問題があるのは明らかなのですが、どうしても中小企業の営業体制は属人的になりがちです。世代交代前の営業担当者が定年退職した今では、過去と現在の営業活動の違いが明確には洗い出せません。実際には何が真の問題点なのか、J社内では追及できない状況にありました。

ポイントは「量」にあった

問題点・課題の特定のため、社長と営業担当者全員にヒアリングを実施しました。初回のヒアリングでは、各々問題点が矢継ぎ早にあがるのですが、営業のテクニックやスキルなど戦術的な未熟さに対する指摘に終始しがちで、真因が全く掴めません。しかも営業担当者は、「主要顧客には昔よりも積極的に営業をかけている」と言うのです。

なお、売上減少の要因を探るためにJ社の売上構成を事前に調査したところ、主要取扱商品の喪失や価格変動など、商品面の影響はあまり考えられませんでした。一方、顧客別の売上推移を調べたところ、売上規模をA~Cランクに分けたとして、Aクラスの得意先10社のうち、6社が毎年1割強の売上を落としていました。この6社ともに業績が堅調であり、市場縮小などの外部要因の煽りを受けている様子はありません。但し、この内の数社はJ社が取り扱う輸入玩具に対し、競合他社との取引開始に至っている事実があります。

まず、現在その6社を担当する計2名の営業活動を分析することにしました。さらに、定年退職した過去の営業担当者にも協力してもらうことができ、当時の営業活動についてヒアリング調査をすることができました。J社内のヒアリングでは、営業活動の問題に対して、テクニックやスキルばかりが重要視されていました。しかし、退職した前任の営業担当者と現在の営業担当者のヒアリング結果から、それぞれの営業活動の比較を通じて分析したところ、戦術的な顧客へのアプローチ手法など、テクニックやスキルの格差はあまり認められませんでした。ただ、この検証については、さすがに私が営業現場に同行して深堀りする訳にもいきません。

そこで、両者の営業活動の「量」に注目したところ、ここに大きな差異が見つかったのです。

接点をどれだけ作れているか

以下が前任と現在、それぞれの営業担当者が得意先に営業活動やフォローとして実施していた、量的な内容です。

前任 訪問回数 月1回 / メール 月10回  / 電話 ほぼ毎日
現在 訪問回数 月2回 / メール 月3~4回 / 電話 月5~6回

訪問による対面営業は増えていますが、非対面の営業活動が大きく減っています。トータルでは、既存顧客と接する回数が大幅に減少していたのです。

最初に、営業においてテクニックやスキルは重要です。これらは他社に模倣できない無形資源として、営業力、ひいては経営に大きなインパクトを与えます。一方で、営業力強化において、定量的に測ることができないテクニックやスキルをやみくもに問題として指摘し続けても、期待効果や即効性が測れない対策ばかりが生まれてきます。したがって、対策の初期段階では、営業活動をいくつかの視点で分析することが役立つのです。

今回は、営業活動の問題を「量」の視点で考えています。

既存顧客といえども、J社からのフォローが減少すれば、発注や相談を持ち掛ける際に、真っ先にJ社の営業担当者の顔が思い浮かばなくなります。競合他社の介入は納得できるものであり、完全に乗り換えられてしまう可能性も高まっているでしょう。

前任の営業担当者は、既存顧客との関係性を構築する上で、接点の回数にこだわっていたのです。簡単に言うと、訪問する・しないに関わらず、毎日の接点作りを欠かさず行ったことが、強い顧客関係性に繋がったということになります。なお、前任の担当者は電話での接点作りを毎日重ねたことで、顧客の担当者とも打ち解け、自然と顧客の課題(=ニーズ)に触れる機会にも恵まれていたとも考えられます。これは、取引関係において絶対的な優位性に繋がるものです。

接点作りの面では、訪問という行為は営業活動としては明らかに可視化でき、営業の量としてカウントしやすいものですが、相対的にメールや電話はそうではありません。顧客との関係性を維持する営業活動量を測るには、可視化しにくい行動をカウントすることも必要になります。

繰り返しですが、営業活動を改善する際は、可視化しにくい行動までしっかり捉えて営業量の変化を確認する必要があります。そこでの注意点は、顧客との接点作りに通じているかをチェックすることなのです。

この状況を踏まえ、今年初めにJ社社長は既存顧客へ新年の挨拶に赴いた際、過去から現在の自社の営業活動について、どのような点が変化したと感じるかを尋ねていました。すると大半の顧客は、「市場動向の情報提供や相談対応など、コンタクトが過去の方が多かったが、現在はその頻度が低下した」と回答したのです。

さて、ここまでは「量」で営業活動の改善をご説明しましたが、重要な視点はもう一つあります。

営業の成果は細分化される

営業の成果は以下のように細分化されると言われています。

営業の成果=「質」×「量」

言うまでもなく、営業には質も重要です。この時代に「量」だけ求めても結果は得られないのは誰もが頷くところでしょう。部下の営業担当者に「今日はその得意先のところに何しに行くの?」と尋ねてみてください。おそらく多くは「昨月の提案結果を聞きに行ってきます」と答えるのが現実です。

営業の「質」については、次回また触れていきたいと思います。

 


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石井 伸暁

中小企業診断士・1級販売士。専門商社で15年以上の小売業支援経験を有します。信条は「WIN-WINアプローチ」。ビジネスの成功は、顧客の利益創出を相互の「協同」と「交換」で成し遂げていくものと考えています。