中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士の米澤です。
あっという間に…7月も最終週です。
蝉もミンミンと元気に鳴いていて、いよいよ夏本番です。
(関東の梅雨明けはいつなのか・・・)
しっかり食べ&寝て、夏バテしない身体づくりをしていきましょう。
今回は、企業を支える「経営人材」と題して
経営者を支える右腕人材について考えます。
孤独になりがちな後継者
私の支援先で、30代の副社長へ事業承継を進めている企業があります。
後継者となる副社長は、今までの経営者がやっていなかった
海外展開の案件をまとめあげるなど、新たな領域への取り組みを進めています。
しかし、先日この後継者が一言、こんなことをおっしゃっていました。
「同じ世代の後継者の知り合いもいないし、社内も親世代を支えた社員が多いので
時々寂しい気持ちになりますね・・・」
こういった思いをもつ後継者は少なくありません。
中小企業庁が発行している『中小企業白書』の2017年版では
次のような調査結果が掲載されています。
(出所:中小企業庁編「2017年版中小企業白書」)
中規模法人に「事業を引き継いだ際に問題となったこと」を聞いたところ、
1位が「社内に右腕となる人材が不在」があがっています。
特に、親族外で事業承継をした人の回答率が、より高い結果となっています。
(出所:中小企業庁編「2017年版中小企業白書」)
逆に、事業を引き継ごうとする、先代の経営者はどのような課題を抱えているのでしょうか。
後継者に経営を引き継ぐ上での課題と対策・準備状況についての調査では、
「後継者を補佐する人材の確保」について、
後継者が決まっている企業および決まっていない企業共に課題と感じられていますが、
対策・準備を行っている割合は低いことが読めます。
したがって、事業を承継する際に、「後継者を補佐する人材」の確保について課題に感じつつも
準備が遅れ、その結果後継者が
「社内に右腕となる人材が不足している」と感じていることが
これらの調査結果から読み取れます。
後継者を支える人材の育て方
では、後継者を支える人材はどのように育てればよいのでしょうか。
人材育成には10年スパンの時間がかかります。
後継者を支える人材育成に取り組まれている
A社さんの事例をご紹介します。
①後継者と同年代のリーダーを任命
A社さんは、昨年30 代の息子さん(3代目)に事業承継をしました。
3代目の息子さんは、自身を支えてくれる右腕となる人材を育成しようと
息子さんと同じ年齢で、営業部門のリーダーになりつつあったBさんを
公的機関で提供していた
右腕人材育成のプログラムに参加させることにしました。
この際、3代目は先代や社内の役員(親世代がほとんど)に対して
「Bさんを右腕として育成する」と相談し、親世代の役員たちからきちんと
承認を得たそうです。
そうしないと、まだ営業部門のリーダーであるBさんと
役員との間にイザコザが生じる可能性がある、と
3代目が考えたためで、承認を得る手続きは慎重に進めたそうです。
②「経営視点」へ視野を広げる
Bさんは日頃からまじめに業務に取り組んでおられましたが、
あくまでも自身が担当する「営業」の部分だけで
会社全体の「経営」までは考えがおよんでいなかったそうです。
そこで、参加した右腕人材育成のプログラムでは
経営戦略の基礎知識から、自社の強み・弱み等の分析のワークを経ることで
「営業」目線から「経営」目線へ視野を広げることができました。
また、経営を考えるには会計知識が必須と気づいたことで
簿記の勉強を始めました。
③PDCAを回すプロジェクトを任せる
右腕人材のプログラムで一通りの知識を学んだBさん。
そこで、3代目はBさんに
新製品の営業戦略の企画立案と実行管理まで
一手に任せることにしました。
Bさんは営業部門のリーダーのため
その上には営業部の部長がいます。
3代目は営業部の部長に相談し、この件はBさんに任せるように事前に相談をしました。
Bさんが自分で経営の意思決定プロセスを実行できるように
場を整えるためです。
Bさんは今まで、上司である営業部長の指示に従うことが多かったそうですが
戦略を考え、営業チームの実行管理をするまで、
失敗もしつつ、四苦八苦しながら進めています。
このように、右腕となる人材を育成するには
経営戦略のPDCAを回すことができる、プロジェクト形式の仕事を
任せながら、経営判断を下す場面を多く経験することが重要です。
経営の知識はどこでも学ぶことができますが、
それを実行するのは、やはり毎日の現場の積み重ねなのですね。
また、A社の場合、Bさんが「次期リーダー」となる環境を
3代目の後継者が中心となり、親世代の役員もうまく巻き込みながら
つくっていることも見逃せないポイントです。
人材育成は、各社ごとのオーダーメードの対策が必要になります。
また、育成の効果がすぐに見えづらく、専門的な部分も多くあるため
人材育成を得意分野とする中小企業診断士等、外部専門家に相談することも
有益です。
ぜひ、あなたの会社の「右腕」となる人材の育成について
これから考えてみてください。
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