私は、事業計画(=中長期の経営計画)を分析する機会が多くあります。
事業計画を分析する際には、まず「この企業の製品、商品、サービス(以下、商品と略)は売れるかな?」という観点で考えています。

まずは商品ありき

事業を運営していくにあたり、まずは商品ありきです。商品がなければ事業はできません。
次に来るのが、その商品を販売する顧客です。顧客が商品を買ってくれなければ事業は継続できません。

元手が少ない創業段階では、多くの場合、自身が最も得意とする技術や、興味のある商品を提供していくパターンが多いと感じます。
そして多くの企業は、長年の間、創業時に決めた技術や商品を中核に事業を運営していきます。

どんな商品であれ、売れる可能性はあります。
しかし、創業から数年間や、大きな外部環境の変化が発生した後には、想定よりも売上高が得られないこともでてきます。
想定よりも売上高が少なくなることが判明した時点で、経営支援を行う外部機関に相談すると、事業計画の作成や見直しなどを勧めてくることがあります。
この事業計画の作成で考えたいのが「顧客と商品の絞り込み」です。

顧客と商品の絞り込み

事業の戦略を考える際には、「①誰に、②何を、③どのように、提供する」というフレームを使うことがあります。
「②何を」は、商品です。
「①誰に」は、商品を買ってくれる顧客(ターゲット)です。
「③どのように」は、どこで売るのか、値段はどうするのか、どのように仕入れを行うのか、どのように宣伝広告するのか、どのように競争相手と差別化するのか、どのようなタイミングで販売するのか、どのような体制で販売するのか、など色々なことを考えていきます。

これ以降では、飲食店の事業計画で、よく見かけるターゲットの設定例を挙げてみます。

 

中小規模の飲食店は、狭い地域の顧客の、特定の顧客属性(性別、年齢、年収、趣向など)を相手に商売をしています。
ところが、こういった飲食店の事業計画を分析すると、あまりターゲットが絞り込まれていないことがあります。
例えば、「〇〇町に住んでいる、若者から中年までの男性をターゲットにしています」みたいな、ふわっとした感じです。
本来なら、「カロリーを多く望む人」、「安さを求める人」、「高価格でも珍しいものを求める人」、「〇〇専門店」、「近場の店を選ぶ人」、「遠出してでも通う人」、「メインとなる時間帯」、「和食を好む人」、「20~30代」など、より詳細な属性まで落とし込んで考えていく必要があるのですが…。
この理由は、「より多くの顧客に対応することで、売上を高めたい」という思いがあるからだと感じます。

 

しかし、ふわっとしたターゲット設定だと、以下のようなことが起こってしまいます。

  • 幅広い属性のターゲットに対応するため、商品の品数を増やす必要があり、食材の種類とその総量が増える。
  • 多数の商品を作るため、仕入の総原価が高くなりがちで、かつ発注・仕入・納品作業の手間がかかる。
  • 多数の商品を用意する一方で個々の商品が売れない可能性が高まるため、食材の廃棄率が悪化する。
  • 材料の保管場所が増え、その分フロアーが小さくなる。
  • 専門性が低くなり、顧客が店を選ぶ理由がなく、複数の飲食店を比較した際に、自社が選択されない可能性が高まる。
  • 幅広い属性のターゲットに宣伝をするため、様々なバリエーションでの宣伝広告が必要となり、費用がかさむ。

本来、色々なお客さんに対応して売上高を高めるつもりだったのに、実際にはデメリットが多いのが分かりますよね。

 

逆にターゲットの絞り込みをしっかりとしていれば、上記の項目は反転して、以下のようになります。

  • 限定的な属性のターゲットに絞り込めるため、商品の品数や、食材の種類とその総量を減らせる。
  • 商品が少ないため、仕入の総原価が少なく、発注・仕入・納品作業が減る。
  • 商品が少ないため、食材が少なくなり、廃棄率が改善する。
  • 商品の保管場所が減る分、フロアーを広く使える。
  • 専門性が高まり、お客さんから見て選択がしやすくなり、顧客が自社を選ぶ可能性が高くなる。また、専門性が高まることで、遠方からの来客が期待できる。
  • 限定的な属性のターゲットに宣伝をするため、宣伝広告のバリエーションが減り、費用が削減できる。
  • 専門性が高まることで、特別な体験をした顧客からの口コミが発生しやすくなる。

パッとみても、顧客を絞ると良いことが増えますよね。

客数を算出する

ところで、上記の飲食店の例だけだと、本当にターゲットを絞り込んでいいのか不安になりますよね。
そんな方に不安を解消していただくため、例を出して、客数を算出してみます。

まず改善前として、法人企業*、平均客単価は800円、年間の営業日は300日、営業利益率は12%(0.12)、税引前利益は500万円(5,000,000円)と仮定します。
*経営者の人件費を販売管理費の一部として扱うため、法人企業としています。個人事業主の場合は、税金を支払った後の利益が収入となるため、利益率や利益額のパラメーターを設定をする際には注意してください。

【計算式】
利益 = 売上高 - 費用
   = 売上高  × 利益率
   = 客単価 × 客数 × 利益率
   = 客単価 × 一日の客数 × 年間の営業日数 × 利益率

↓↓↓

一日の客数 = 利益 ÷ (客単価 × 年間の営業日数 × 利益率)  

一日の客数 = 5,000,000÷(800×300×0.12)
      = 173.6人

この例であれば、一日174人のお客さんを集客できれば、目標利益に達します。

ターゲットと商品を絞り込む改善を行った結果として、利幅が低く人気のないメニューの削減、より高級な食材を使ったメニューや高付加価値なメニューの開発等を行い、平均客単価を150円アップしたとします。また、メニューの平均の利幅を高めたことと、商品を絞り込んだことで食材の廃棄率が改善したことで、利益率が3%アップしたとします。
この場合は、法人企業、平均単価が950円、年間営業日は300日、営業利益率は15%(0.15)、税引き前利益は500万円(5,000,000円)となります。

一日の客数 = 5,000,000÷(950×300×0.15)
      = 117.0人

改善前と改善後では同じ利益額にしているにもかかわらず、一日の客数を、57人(174-117)減らすことができます。
しかも、ニーズに沿った商品開発を行ったことで、ファンを増やし、口コミを誘発させ、客数を増やせる可能性も出てきます。

 

もちろん実際には、ここまで改善を果たすには、試行錯誤の末となるはずです。
しかし、顧客と商品の絞り込みによって、顧客ニーズを捉えた商品を提供できれば、こういった可能性を見いだせることが分かったと思います。

 

今回の例は、すべての業界業種、すべての状況に対応するわけではありません。
しかし、絞り込みによるメリットについて、なんとなく理解して頂けたと思います。
事業の拡大や立て直しをする際には、ぜひ一度、「顧客と商品の絞り込み」を考えてみてください。

 


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布能 弘一
千葉県柏市に在住の中小企業診断士。 WebやWindowsなどアプリケーション開発やインフラ環境の構築を担当。登録後、経営に関する各種執筆や、IoT・売上などのセミナー、商業やサービス業の経営支援などに従事しています。 理念は「三方よしの企業を増やす」
布能 弘一

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