先日、長年通っているヘアサロンに予約の電話を入れると、
ずっと指名していたスタイリストが退社していました。

ここ5年でお気に入りのスタイリストが5人は退社しています。
私が疫病神だからでしょうか。
いや、そうではないようです。
  
 

もし貴方の会社が離職率80%だったら?

途轍もなく離職率が高い業種があります。 美容業界です。
美容業界に多い退社動機を3つ挙げます。実際に数人の美容師から聞いた退社動機です。

①薄給
美容師の平均年収は、アシスタントからオーナーを平均して300万円程と言われています。
20代が多いアシスタント時代は驚くような薄給で、月の手取り13万円というのもザラにあります。
 
②労働環境
美容師は長時間の立ち仕事です。さらに、アシスタントを例にとれば出勤時間は朝8時。
閉店後は後片付けからトレーニングで、退勤時間は深夜12時を回ることもしばしば。
身体は、毎日の洗髪やカラーリングで大量の薬剤に晒されます。
職業病といえば手荒れ、肌荒れ。かくも肉体的負担が大きいのです。
 
③人間関係
最後は職場内コミュニケーションの精神的負担、つまりストレスです。
美容師になるには、まず美容専門学校を卒業して資格を取得します。
但し、実践的な技術を学ぶ機会は限定的です。
それは就職後、先輩美容師の指導を通じて学んでいきます。
人材育成は先輩美容師との師弟関係に依然しがちです。体系的な指導は多くありません。
美容師同士のコミュニケーションに問題があれば、ストレスは避けられないでしょう。

こうした労務環境が災いし、80%もの高い離職率を引き起こしているのです。

もし、貴方が人材確保に問題を抱える美容室の経営者だったら…
これらの動機に対して、どこから対策を取りますか?

 離職防止の万能薬はある?

ここで、厚生労働省の調査から足元の雇用情勢を俯瞰してみましょう。

労働市場は「売り手」でごった返しています。
平成28年度の有効求人倍率は1.39倍。前年度から0.16ポイント上昇しました。
 
そして美容業界の動向です。
平成27年3月末現在の従業美容師数は、約49.7万人で前年より9,061人増加しています。
また、平成27年度中に新たに美容師免許を取得した人は19,005人。
これも前年度より増加しています。
事業所数は23.8万施設。前年度比1.5%の増加となっています。
 
美容業界は、美容師数・事業所数共に増加傾向にあるにもかかわらず、離職率が異様に高いのです。
人材確保の困難化に拍車がかかっています。
美容師はアーティスト性が強く、その道を突き詰める人ほど、パーソナリティが顕著です。
その上、指名制度によって在職中から顧客の確保が可能です。
そもそもが、独立志向の強い技術者集団なのです。

ともなると、腕のある美容師を自社にとどめ置くのは容易ではありません。
では、どのような方策で人材を確保していくか考えていきましょう。

経営理念が人を引き寄せる

 「報酬体系」「労働環境」「人間関係」
これらの離職動機への対策は、企業の人的資源管理のあり方によって様々です。
どの企業にも処方できる人材確保の特効薬などないでしょう。
その証に、これらの離職理由は美容業界独特のものではありません。
一般的な雇用に関する統計を見ると、大抵これらの理由が挙げられています。

ともすれば、自社に最適な対策を検討する前提が必要です。その前提とは何でしょうか?
それは企業の社会的存在価値を示し、経営活動最大の前提となる「経営理念」に他なりません。
前提を「想い」と読み替えても良いでしょう。

経営理念が強く社内に発信されると、同じ「想い」を持つ人が引き寄せられて集まります。
なぜなら「想い」には、利害関係を超越して相互の一体感を生み出すパワーがあるからです。
つまり、経営理念は離職を防止する労務環境の基盤になる、ということです。

少々給料が安くても、経営者と社員の「想い」が一致している企業は居心地が良いでしょう。
居心地が良ければ、その会社は人間関係も良い傾向に向かうはずです。
さらに、経営理念が社外に発信されると、顧客などのステークホルダーにも影響を与えます。
将来、貴方の会社に入社する人は「想い」に共感している顧客…そう、お客様かもしれません。

美容業界でも、採用、育成、定着を促すにあたり、経営理念を重視する企業が増加しています。
単に離職率を下げるためではありません。
美容師ならではのパーソナリティをまとめあげる力として、必要とされているからです。

経営理念…真剣に考えてみませんか?
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石井 伸暁

中小企業診断士・1級販売士。専門商社で15年以上の小売業支援経験を有します。信条は「WIN-WINアプローチ」。ビジネスの成功は、顧客の利益創出を相互の「協同」と「交換」で成し遂げていくものと考えています。