西 精工株式会社様(徳島県徳島市 西 泰宏社長)http://www.nishi-seiko.co.jp/

西 精工株式会社様は、高品質・高機能のパーツ・ナットのメーカーです。
ものづくりの会社ですが、人づくりの器でもありました。

おもてなしにもほどがあります

「有名な旅館に来てしまった」
会社入口の守衛所の前には社員さんのお迎えの列が並んでいます。
満面の笑顔で「いらっしゃいませ」と。たかが見学会に来ただけなのですがこちらが少し照れてしまいます。

実はこれ、お客様を迎えるためではなく、社員さんを迎える挨拶運動だそうです。
自発的に守衛所前に立ち、出社する社員に声かけしています。
新入社員が入ったり、中途社員が入ったり、あるいは少し元気がなかったりした時に自発的にチームでやっているとのことです。

社屋に入ると社員さんは全員立ち上がって笑顔で「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」と。
社屋の入り口から2階の会議室まで迷うことなくすべての場所に社員さんが立って案内してくれます。
やはり笑顔で。

ホスタビリティにもほどがあります。
50名ほどが入る会議室に通されると座席には、私の名札が用意されWelcomeカードが置かれています。20名ほどの参加者でもすべての机の上にそれぞれ用意するのは意外と労力がかかるんです。私も仕事で何度かやりましたが一番気を遣うのは、名前を間違えないこと。それだけでも細心の注意が必要になります。

私の会社でもイベントで参加者が胸にする名札を用意します。その度に毎回誰かの名札がない!と大騒ぎしているのを思い出しました。

 

旅行気分で参加

西精工さまの見学会に参加したいと思ったのは10か月前のこと。
私のメンター香川県中小企業診断士協会の山下会長の強烈なススメでした。

「日本でいちばん大切にしたい会社」を読んで知っていたこともあり、機会があれば見学に行きたいと胸に刻まれました。

偶然ですが、私が懇意にしている都内のサービス業の社長もホワイト企業大賞の西精工さんをご存知でした。見学会に興味をお持ちでしたので、今回一緒に行くことになりました。
「名物の朝礼を見れればいいな」という程度で社長はいたようです。
実は私も社長と二人で話をする時間が欲しかったのが本音です。
そんな軽い小旅行気分で参加しました。

 

ちょっと小旅行で阿波踊り会館まで散歩

 

 

西精工さんの名物朝礼は人間力育成道場

いよいよ、西精工さんの名物朝礼です。毎朝1時間かけて朝礼する意味はどこにあるのだろうか?
興味津々、見物気分で拝見します。

理念の前に「創業の精神」の唱和から始まります。
リーダー「人間尊重の経営で、人と人とのふれあい・・・」
全員「人間尊重の経営で、人と人とのふれあい・・・」
多くの会社でよく見る光景の一つです。ただ、声の大きさから本気の違いを感じました。

唱和が終わると朝礼の議題が説明されます。
テーマは西社長の信念の一つである。“愛情を持って、チームメイトにも自分にも厳しく”
小グループに分かれた5,6名が、テーマに対して、できていること、できていないことを話し合います。
人が話しているときは一生懸命メモしています。誰が何を話したのか後でわかるようにしているようです。聞き流している人はいません。
一体このメモはこの後使うのであろうか? 
メモったけど後で見返すことはない。という“あるある”ではないかと疑い深く見ていました。

 

そんな自分が恥ずかしい。
小グループでの話し合いが終わると、再び大きな輪になります。今度は各グループで話し合った内容の発表です。しかも、発表者はあらかじめ決められていたようではありません。
「そうか。だから一生懸命メモってたのか」
これは朝っぱらからド真剣に他の人の話を聞かないわけにはいかない。とんでもなく疲れそうな朝礼でありました。

全体が輪になりチームごとの発表後はファシリテータから突っ込み質問が入ります。
○○さんは、そのときどう思ったのか? 
○○さんは、どういうときにそのような行動ができたのか?
○○さんは、もっとよくするためにはどうしたらよいか?

一人ひとりが話すとき、全員の視線が話し手に向けられます。いや。視線ではなく身体の向きが話し手に向き直されるのです。一人として聞いていない人はいません。

彼らは毎日理念を達成するために日々行っていることを発言し、できていることを確認し、できていないことを反省しています。
どうしたら理念に近づけることができるようになるのか。
毎日毎朝、全社員で考えている訳です。

言い換えると毎朝、組織開発のための超ハードで良質なコミュニケーションを取っていると言えるでしょう。人間力育成道場です。

 

私も超ハードで良質なコミュニケーションをファシリテーションすることが多々ありました。終了後はとても達成感がありますが、その反対にとてもとても疲労します。
翌日は使い物にならないくらいです。
それを毎日やられているとは。。。脅威です。

私が行うセッションは対象企業の社員にとっては数年に一回のことです。そのため参加者から最も多い感想は「他部署の人と話す機会があって大変良かった」です。
でも、西精工さんはそれを毎日されているのです。
「他部署の人と話す機会があって大変良かった」そんな生ぬるい感想はありえません。

 

西精工さん、どこが会社概要説明ですか?

朝礼が終わり、次に西社長から会社概要の説明があります。2時間も。
予定を聞いたときは「なんだか長い会社概要説明で退屈になりそう。寝てしまったらどうしよう」と直感的に感じました。売上推移とか目標とかの話だと1時間も持たないけど、どうするんだろうか?

その思いは最初のスライドからみごとに裏切られました。
普通に考えると会社概要だと、会社の沿革、売上、商品、実績などの話から入りますよね。よくて理念から。

西社長の最初のスライドは、マラソン練習前の社員との集合写真です。
10名くらいでしたでしょうか。なんと最初はその社員の生き様の紹介からです。

全てを記載するわけにはいかないのが残念です。
その中でも私が2番目に号泣した話を紹介いたします。

西精工さんは社員が辞めません。
西精工さんの離職率は、52期で2.5%です。全国標準が14.4%なので大きく下回っています。しかも自社目標は3%なので目標も達成しています。
(2013年経営品質報告書より)

でも、中には辞める社員がいます。そりゃあそうです。
辞表を出した女性社員は、入社(記憶では)2年目、明るく大変優秀な方です。
西社長が理由を聞いたところ。
「本当は辞めたくない。お母さんのご兄弟がなくなり、そのショックでお母さんも倒れてしまいました。お母さんは家族経営の経営者でしたので、仕事が全く回らなくなりました。そのため、私が手伝うしかありません。家族が助けを求めているので助けないわけにはいかないのです。そのため、来月で退職させてください。」

西社長は「そういう理由なら今すぐ辞めなさい。あなたが支えてあげなければならないなら今すぐ助けてあげなさい。その代り、もし支える責任がなくなったらうちの会社に戻ってきなさい。いつまでも待っているから」

そんなことを語ってくれた西社長の目には涙があふれそうになっています。
私の頬はすでに洪水です。

見学会は延べ100回になるそうです。恐らく何度も何度も同じ話をしていることでしょう。その度に、西社長は目に涙をためるのでしょう。
「家族を想っている」としか考えられません。「社員想い」を超えてイカレタ熱い想いを感じます。

そういう私も2か月後に20年務めたキヤノンマーケティングジャパン株式会社を退職します。そのため余計に涙があふれたのかもしれません。

実はこの話、前の夜に西社長を囲んだ飲み会で西社長が話してくれました。そのときに西社長と私、周りの人たちも号泣です。
翌日、全く同じ話を西社長がされたのですが、また号泣です。
まるで、何度も見た映画の同じシーンで何度も泣くようなものです。

 

西精工さんでは、毎日がお誕生日会

社員さんの誕生日には社長がハッピバースディを歌います。
そのあと「ハグ」
社長がプレゼントを渡すと、社員さんからも有志でプレゼントを渡します。
241名も社員がいると毎日がお誕生日会ですね。
この日は男性社員2名がお誕生日でした。社長は2回ハッピバースディを歌って、2回「ハグ」していました。

女性社員の場合はどうるすのでしょう? ブラックな香りがしますね。
ちなみに女性社員の場合の「ハグ」は、西社長は手を広げるだけで後は女性にゆだねるそうです。

私はつい先日、息子が大学合格したので「ハグ」しました。十数年ぶりでした。

 

理念経営を目指すならば、西精工さんを見ていただきたい

私は4月からコンサルタントとして独立します。
私の理念は
「顧客に感謝されて、経営者と従業員が笑顔で働き、幸せを感じ続けることを提供する会社を増やす」ことです。

西精工さまのような会社を増やすお手伝いすることができたなら、少しは世の中のお役に立てるのではないかという想いを新たにしました。

西精工さんはホワイト企業大賞ですが、西社長ご自身が「うちは大家族主義です。家族を守るためには通常考えられないことをしています。そういう意味ではブラックです。」

241名の大家族。家族一人ひとりの生きざまを守るために時にはブラックにもなる。その家族を想う行動の積み重ねでホワイト企業大賞、日本経営品質賞を受賞されたのでしょう。

働き方は、働く人が仲間を大事に想い仲間のためには休日も惜しまずつくすことだと学びました。会社人生は会社で一番長い時間を過ごします。その会社の居場所が心地よくないと不幸になります。人に認めらる居場所があることが何よりうれしいことなんです。
この小旅行で私の人間力は大きく成長しました。

西社長は見学会を今後も継続するとのことです。その目的は「人に見てもらうことで、自分の反省になり、理想とのギャップに気が付けます。まだまだ、できていないことばかりです」
とおっしゃっていました。頭が下がります。

最後まで読んでいただいたみなさまに一言
理念経営という言葉を聞いたことがある、もしくは理念経営を目指している方々へ

会社が何のためにあるのか? 
その本質の答えを求めるならば、西精工さまを見学することで大きなきっかけになります。西精工さまは貴社のベンチマークになることでしょう。
ぜひ、徳島にお出かけください。

西社長、西精工さんのみなさま
貴社にはたくさん泣かされました。また泣かされに伺いますのでよろしくお願いします。

   

見学会の前日 西社長と私 この後2次会までご一緒させていただきました。

 

社長・マネジャーのための部下のやる気を引き出すリーダーシップ

 

 


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高橋 光久

売れる営業戦略をつくり、実行する強い組織をつくる「6カ月で売上アップする営業コンサルタント」  【略歴】キヤノンマーケティングジャパン(株)にてコンサルティング事業を立ち上げ、取引先販売店に対する営業コンサルティングに14年間従事。営業戦略、営業力強化、営業マネジメントなどのコンサルティング、および営業研修・教育研修などで、50社以上の中小企業経営者と500名以上の営業に対し営業戦略策定、営業組織変革を実施し、売上向上に寄与。独立後、ビジョン構築から戦略立案、マネジメント、実行を一貫して支援。営業力を向上させるための「傾聴力」や「質問力」、「仮説力」、「営業戦略立案」、「組織マネジメント」に関するセミナー実績多数。

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