先日、ある調査活動で、食品製造業を営む会社を訪問する機会がありました。
会社名をS社とします。
S社の社長は2代目経営者。年齢は若く39歳です。

小さな事務所の隅にあるテーブルで、社長と話すこと30分。
外回りから戻ってきた若い営業マンが見えました。
しばらくすると、事務所にいた営業部長らしき男性が、いきなり若手社員を叱責しはじめました。

営業部長の怒りは収まりません。
「だから、先方はお前になんて言ってたんだ!」

社長が「やかましくてごめんなさいね」と一言。
話が一通り終わり、さらに一言。

「若いやつが育たなくてね」

S社は、1年前から大手小売チェーンとの直接取引に成功していました。
業績は好調です。
社長自ら営業改革を標榜して、トップセールスを進めた成果でした。
過去は、付き合いの長い食品卸との取引をメインに、地道な営業活動を続けていました。
その営業スタイルは、まさに「御用聞き」そのものだったと社長は言います。

社長曰く、営業スタイルを「御用聞き」から「攻め」に変えた、ということなのです。

御用聞きは古い!?

御用聞きと聞いて、どんな印象を持ちますか?

昨今、コンビニエンスストア各社も、商品を自宅に届けてその場で注文も受ける
「御用聞き」のサービスに力を入れています。
外出に不自由を感じるお年寄りであれば、話を伺うことが営業活動となります。

攻めの営業とは、決して営業担当者が顧客へプッシュし続けることではありません。

顧客の要望を聞き、対応し、可能な限り提案する。
これが顧客の声を大切にした営業活動です。

数日後、私は再度S社を訪問しました。
午前中に訪問したこともあり、これから客先に向かう若手営業マンが打ち合わせをしています。

S社は取引先が大きく拡大したことから、最近製品カタログを作成しました。

部長「すぐに秋の商戦期だからな。カタログからこれとあれ、あとあの新製品も提案してきてくれ」
営業マン「はい、わかりました」
部長「タイムスケジュールが大事だぞ、バイヤーとは30分しか話せないんだろ」

私は感じました。
もしかすると、この営業マンは客先で話すことに精一杯になっているのではないか?
客先の声を聞くに至ってないのではないか?

営業部長の言葉が耳から離れません。
「だから、先方はお前になんて言ってたんだ!」

耳からはじめる営業

御用聞きは営業の基本です。
ニーズに対応することが重要なのは、誰でもわかること。

「傾聴力」という能力があります。
相手の話に耳を傾け、頷き、相手が伝えたい気持ちを引き出す力です。

伝えることは、自己実現の達成です。満足感を得ることができます。
一方、ひたすら聞かされることは話し手の自己実現に付き合うこと。
それはストレスにもなりえます。

これが、自社の営業マンと客先のバイヤーの関係であれば、どのような結果になるでしょうか。
悩みに耳を傾けてくれる営業マンと、自分の売り込みばかりする営業マン。
バイヤーは、どちらにストレスを感じるでしょうか?

営業活動に必要な能力のひとつに、セールストークがあります。
セールストークの技術を極めるのは大変です。トレーニングと経験が必要となります。
ちなみに、セールストークの技術もいずれは使い古されます。
例えば、深夜に放送されているTVショッピングは、どれも似たような展開ですね。

営業マンの育成には、セールストークの前に、傾聴力を磨いてはいかがでしょうか。
それは、経験に多くを依存しません。

「傾聴力」によって貴社の営業力は向上します。
我々はそのお手伝いができる中小企業診断士のチーム
株式会社FYSコンサルティングです。

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石井 伸暁

中小企業診断士・1級販売士。専門商社で15年以上の小売業支援経験を有します。信条は「WIN-WINアプローチ」。ビジネスの成功は、顧客の利益創出を相互の「協同」と「交換」で成し遂げていくものと考えています。