2回にわたり、小売業における商品ロス削減の重要性についてお伝えしています。
前回は「商品ロスの経営ダメージ」と「発生要因」を示しました。
簡単におさらいしましょう。
商品ロスは、会計上、売上原価に含まれます。
そのため、増加するほどダイレクトに利益を押し下げます。
発生要因は以下のように区分されます。
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商品ロス発生要因
・外部ロス…外部の者によるロス(万引きなど)
・内部ロス…内部関係者によるロス(内引きと言われるスタッフや出入業者による商品の持ち出し)
・管理ロス…商品管理上のロス(入荷処理モレや棚卸作業のカウントミス)
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前回は、外部ロスの対策についてお伝えしました。
統計では、全体の商品ロスのうち、管理ロスは35.2%、内部ロスは9.2%を占めることが分かっています。
(引用:Global Retail Theft Barometer 2013-2014)
つまり、仮に年間100万円分の商品ロスがある小売業では、
約35万円分が、万引き以外の原因で引き起こされています。
今回は、「内部ロス」対策について触れていきます。
内部不正がもたらす経営へのダメージ
内部ロス…いわゆる内部不正、内引きと呼ばれるものです。
主に従業員による商品の盗難が挙げられます。
他にもこのような不正があります。
・返品商品の横領
・帳簿の改ざん
・万引きを装った商品の横流し
以下は、最近私が目にした事例です。
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ある衣料品店では、最近、棚卸商品の差異が増加していました。
本部が調査したところ、その店舗では、同時に返品処理も増加していることが判明。
さらに深堀りすると、お客様からサイズ交換を理由とした返品が、返品処理の大半を占めていました。
問題は、この返品が架空のものばかりだったということです。
とあるパート社員が、お客様からの返品を装い、架空の処理を重ねていました。
当然、返品された商品は店舗に存在せず、棚卸商品の差異が発生します。
そして、その返品により発生した返金分は、パート社員の懐に入っていたのです。
不正は、このような現金の取り扱いに限りません。
今や、販売促進として当たり前のツールに「ポイントカード」があります。
ある書店では、スタッフが特定のお客様に不正にポイントを付与することで、
過剰な値引き処理を引き起こし、実質的な商品の横流しを行っていました。
しかも、そのスタッフは経営者の親族であったものだからたまりません。
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内部関係者による不正は、店舗運営の内部事情を知り尽くした者による行為が大半です。
不正行為の原因となる抜け穴を埋めない限り、
いくら万引き対策に力を入れても商品ロスの削減には繋がりません。
抜け穴が生じる状況に共通する問題は、「まかせっきり」です。
内部ロスを防止するには、牽制機能が実現するよう、業務運用体制の見直しが必要です。
具体的には、商品管理、帳簿整理、仕入返品などの商品ロス発生に密接な業務を、
単独の従業員で完結させない仕組み作りが必要です。
つまり、管理者⇔従業員間の相互チェック体制をもたせる必要があります。
他にも、以下のような対策が考えられます。
・従業員採用時の誓約書締結
・従業員の退店時における持ち物チェック
・バックヤードへの防犯カメラ設置
しかし、このような対策を取ったとしても、抜け穴は完全に塞がりません。
抜け穴を完全に塞ぐには
ひとつ注意すべき点は、故意に先述の相互チェック体制を緩くすることで、
管理者自らが不正行為に及ぶこともあります。
こうなると、店舗の牽制機能は著しく低下します。
店舗、ひいては企業のコンプライアンスレベルを高めなくてはなりません。
そこで、何より重視したい対策は、従業員の防犯意識の向上です。
そのために、業務運用体制を見直す他に以下の対策が求められます。
①ロス対策を経営課題に設定
→従業員における商品ロスの実態把握促進
・商品ロスの発生状況開示
・ロス削減方針の社内説明
・商品ロス対策の目標値設定
②従業員主体の防犯対策推進
・従業員による防犯対策の発案と実施
・定期的な理論在庫と実在庫の差異チェック
・在庫差異の報告共有体制構築
私がご支援した小売店では、このような取り組みによって
「年間商品ロスが0.5%減少した」という報告を受けています。
0.5%といっても、もし年間売上が1億円のお店なら、50万円の利益向上に繋がるのです。
内部ロスの改善は、社内の管理部門による指令的な対策に留まらず、
従業員自ら行動させることが大切です。
それが、従業員に不正行為の心理的抑止効果をもたらし、企業全体のコンプライアンスレベル向上に繋がります。
小売業における商品ロス率の平均は、売上の1%前後と言われています。
小売業を営む経営者のみなさま。自社の経常利益率は何パーセントでしょうか?
ドキッとした方は、チャンスです。
利益確保のため、商品ロスの削減に着手してみてください。
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石井 伸暁
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